日常生活を見直し、
不眠の原因となる
生活習慣を改善します

まずは、不眠の症状や生活習慣を医師に伝え、医師からの睡眠衛生指導をもとに、不眠の原因となる生活習慣を改善します。
ストレス社会ともいわれる現代社会において、不眠の訴えをもつ人は年々増加しています。
日本人成人の5人に1人が何らかの不眠の症状を感じているという研究報告があります。
「眠れない…」と悩んでいるのは、あなただけではないのです。
不眠の原因はさまざまですが、その一つとして考えられるのが、「睡眠」と「覚醒」のバランスの乱れにあります。
眠りたい時に、何らかの理由で体を覚醒させる機能が「眠気」を誘う機能よりも上回ってしまった場合、不眠がおこるという仮説が報告されています。
櫻井武 睡眠の科学 講談社ブルーバックス 2010 p145. より作図
不眠の症状は主に以下のようなタイプのものがあります。
1つだけのこともあれば、複数のタイプを伴っている場合も多くあります。
床に入って寝つくまでに、
30分~1時間以上かかる。
精神的な問題、不安や緊張が強いときなどに
おこりやすいといわれています。
睡眠中に何度も目が覚めたり、
一度起きたあとなかなか寝つけなくなる。
日本の成人の方では、不眠の訴えの中で
最も多く(15~27%)、中高年でより
頻度が高いといわれています。
朝、予定時間より
2時間以上前に目が覚めてしまい、
その後眠れなくなってしまう。
高齢者に多くみられます。
睡眠時間のわりに熟睡感が得られない。
睡眠時無呼吸症候群など、
睡眠中に症状の現れる病気が
関係していることもあります。
不眠は、「眠れない」という夜間の症状だけではありません。
日中の眠気や、だるさ、集中困難など、心と身体にさまざまな影響を及ぼします。
他の疾患や薬物の影響が原因で不眠の症状がおこることもあります。逆に、不眠症状が長く続くことにより、うつ病になるリスクが高くなったり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をはじめとしたさまざまな疾患と関連しているという報告もあります。
不眠症治療では、まずは不眠の原因となる生活習慣を見直し、それらを改善するセルフケアを行うことからはじめます。
ご自身で簡単にできるセルフケアを1日の流れに沿ってご紹介します。
今日から実践できることも多くあるので、ぜひ毎日の生活に取り入れてみてください。
医療機関では、お薬を使った治療も選択肢に入れながら、適切なアドバイスを受けることもできます。
薬には頼りたくない、薬なしでは眠れなくなりそうで怖いなど、薬にあまりよくないイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし最近は、眠れるようになってきたら、徐々に薬を減らしたり、薬をやめるようにするなど、
医師と相談しながら治療法を選択していくという考え方が主流です。
まずは、不眠の症状や生活習慣を医師に伝え、医師からの睡眠衛生指導をもとに、不眠の原因となる生活習慣を改善します。
生活習慣の改善と同時に、必要に応じてお薬を使って治療します。
医師の指導のもと、患者さんご自身の症状に合わせたお薬を適切に服用することで、より安心して使用することができます。
よい眠りのための生活習慣が身につき、症状がよくなってきたら、いつまでお薬を服用するのか、どのようにお薬を減らしていくのか、医師とよく相談して決めていきます。
自己判断で減らしたり中止したりすると、症状が再発する可能性もあるので、必ず医師に相談しましょう。
お薬をやめても状態が安定していることが確認できたら、医師の指示に従って治療を終了します。
終了後も、よい眠りのための生活習慣は続けましょう。
不眠症治療薬の種類には、
「オレキシン受容体拮抗薬」
「メラトニン受容体作動薬」
「GABA受容体作動薬」があります。
オレキシン受容体拮抗薬は、起きている状態を
保とうとする物質「オレキシン」の働きを弱め、
脳を眠りの状態に切り替える助けを
することで眠りに導くお薬です。
メラトニン受容体作動薬は、体内時計の
調整に関係する「メラトニン」の働きを高め、
睡眠リズムを整えて眠りに導くお薬です。
GABA受容体作動薬は、
GABA(ガンマアミノ酪酸)の脳全体の活動を
鎮静化させる働きを促し、眠りに導くお薬です。
薬を使うのは、あくまで選択肢のひとつ。
自分に合った治療法は何か、医師に自身の希望や不安をしっかりと伝え、
よく相談しながら治療を進めることが大切です。
監修:北里大学医療衛生学部 保健衛生学科
精神保健学 教授 田ヶ谷 浩邦 先生